ニキビができた、ということは
恋を覚える年ごろと、吹き出物が増える年ごろが重なった。そこから生まれた恋占い。
場所で読み方が変わる
あなたが見たのは、どれ?
- ①おでこにできた自分が誰かを想っている、とされる吉
- ②あごにできた誰かに想われている、とされる吉
- ③右頬・左頬にできた振る・振られる。男女で左右が逆注
- ④生え際にできた占いの四つの外。後から足された読み平
- ⑤小鼻・鼻にできた惚れ・惚れられの読みが語られる平
- ⑥同じ場所にくり返す占いより肌の事情を先に見たい注
- ⑦大事な日の前に急に緊張や寝不足と重なりやすい時期平
- ⑧言い伝えの出どころ江戸のことわざと80年代のCM平
- ⑨毛穴で起きていること皮脂の詰まりと常在菌の増加平
言い伝えの要約です。由来と現実の視点は下の各節に。
ここで紹介する意味は、語り継がれてきた言い伝えや文化的な解釈です。確かめられた事実ではありません。記事の後半に、生態や体の仕組みなど現実の側の話も添えています。
朝、鏡をのぞいたら、おでこに赤いぽつりがひとつ。昨日まで無かったのに、よりによって人と会う日に。そんなとき頭に浮かぶのが、「おでこは思い、あごは思われ」という、学生のころに誰かから聞いた占いかもしれません。
先に答えると、**ニキビができた場所で恋の行方を読む言い伝えは、「思い・思われ・振り・振られ」という恋占いとして広く知られています。**おでこなら自分が誰かを想っている、あごなら誰かに想われている、頬なら振るか振られるか、という読み方です。ただしこれは縁起のしるしというより、年ごろの男女が面白がって言い合ってきた遊びに近いもので、吉か凶かを重く受け止める種類の話ではないようです。
この占いには、江戸の昔からあることわざという長い下地と、昭和のテレビCMという新しい火付け役の両方があります。場所ごとの読み方、そのあとに由来、最後に毛穴の中で実際に起きていることの順に書きます。
場所でみる意味
占いの本体は、おでこ・あご・右頬・左頬の四か所です。生え際や小鼻は、あとから語られるようになった読みとして分けて並べました。
おでこにできた
おでこのニキビは「思いニキビ」と呼ばれ、自分が誰かに想いを寄せているしるし、と読まれてきました。四つの中でいちばん自分の側の話で、相手の気持ちには触れていないのが特徴です。気になる人の顔が浮かんだなら、占いがその人を言い当てたというより、もともと心にあった名前を思い出させてくれた、と受け取るくらいがちょうどよいのかもしれません。
あごにできた
あごのニキビは「思われニキビ」。誰かがあなたのことを想っている、という読み方です。四つの中でいちばん喜ばれる場所で、学生のころ、あごにできたニキビを友だちにからかわれた記憶のある人も多いのではないでしょうか。誰に想われているのかまでは教えてくれないところが、この占いのうまくできた部分です。
右頬・左頬にできた
頬は「振り」と「振られ」の場所です。紹介されることの多い読み方では、女性は左頬が振りニキビ、右頬が振られニキビで、男性はそれが左右逆になるとされています。つまり同じ右頬でも、読む人によって意味が入れ替わります。左右の割り振りは載せる媒体によって食い違うこともあり、どちらが正しいと決められる種類のものではないと考えたほうがよさそうです。振られの側に当たったとしても、四つのうちの一つを引いたにすぎません。
生え際にできた
生え際は、もとの四つの占いには入っていない場所です。検索ではよく一緒に調べられていて、「悩みごとを抱えているしるし」「考えすぎのサイン」などと語られることがありますが、どの文献や言い伝えに由来するのかは確かめられませんでした。ここでは、あとから足されていった読みの一つとして紹介するにとどめます。
小鼻・鼻にできた
鼻のまわりについても、「惚れニキビ」「惚れられニキビ」といった呼び方で、思い思われの続きのように語られることがあります。小鼻の横にできたものを金運と結びつける読みも見かけますが、こちらも出どころははっきりしません。四つの占いほど広く共有された読み方ではないので、そういう説もある、という程度に聞いておくのがよいでしょう。
同じ場所に何度もくり返す
同じ場所にくり返しできると、何かを知らされているのでは、と気になるものです。ただ、この占いは一粒ごとの出来事を面白がるもので、何度も同じ場所に出ることに特別な意味を与える言い伝えは見当たりませんでした。くり返すときは、占いの読みより先に、その場所の肌で何が起きているかに目を向けたいところです。日本痤瘡研究会は、炎症を起こした赤いニキビや膿をもったニキビの8.2%が3か月以内に痕になると紹介し、軽いうちに皮膚科で相談することを案内しています。
大事な日の前に急にできた
デートや面接、写真を撮る日の前に限ってできる、という話もよく聞きます。こうしたときは「試されている」「縁を確かめるしるし」と読まれることもありますが、大事な日の前は、緊張で眠りが浅くなったり、生活のリズムが崩れたりしやすい時期でもあります。気にして何度も触ってしまうことも含めて、占いの一粒というより、その数日の過ごし方がそのまま顔に出たもの、と見るほうが実情に近いのかもしれません。
由来 — なぜ「ニキビ」が恋のしるしなのか
江戸のことわざ「思い面瘡、思われ面皰」
ニキビと恋を結びつける言い方は、昭和の占いよりずっと古くからあります。「思い面瘡(おもいおもくさ)、思われ面皰(にきび)」ということわざで、故事・ことわざ辞典によれば、人に恋したり、誰かに思いを寄せられたりするとにきびができる、という意味です。「面瘡」も顔にできる吹き出物のことを指します。
恋をする年ごろと、顔に吹き出物が増える年ごろは、たしかに重なっています。若い人の顔に出たニキビを「さては誰か好きな人がいるな」とからかう。その軽い冗談が、ことわざとして残ったと考えると自然です。
このことわざは、「思い」と「思われ」を対にして、面瘡と面皰という同じ吹き出物を指す二つの言葉に振り分けた、言葉遊びの形をしています。自分が想っても、相手に想われても、どちらにしても顔に出る。つまり、どこにできても恋の話にしかならないように作られているところに、若者をからかう側の楽しさが見えます。ここで吉と凶を分ける発想はまだなく、「振り・振られ」が加わるのはずっとあとのことです。ここには吉凶を占う重さはなく、年ごろを見守る大人の、半分ひやかしのまなざしがあります。
昭和のテレビCMで「四つの場所」になった
いま広く知られている「思い・思われ・振り・振られ」の四つの場所の占いは、1980年代に流行したものとされています。ミドルエッジの記事によれば、きっかけはニキビ薬「クレアラシル」のテレビCMで、アイドルの島田奈美さん演じる少女が教室で手鏡を見ながらニキビ占いをする場面が人気を集めたそうです。江戸から続く「思い・思われ」の二つに、「振り・振られ」の二つが加わり、顔の上の地図のような形になったのはこのころと考えられます。
裏取りできなかったこと
生え際や小鼻、鼻の頭など、四つ以外の場所の読み方がいつ、どこで生まれたのかは確かめられませんでした。東洋医学の考え方と結びつけて「この場所は胃腸」「この場所はストレス」と説明する話も多く見かけますが、今回あたった範囲では、それを占いの由来として裏づける資料は見つかっていません。本文ではこれらを「そう語られることがある」という扱いにしています。
現実の視点も1つ
日本皮膚科学会は、にきびを皮膚の慢性炎症性疾患の一つと位置づけています。熱が出たり寝込んだりする病気ではないものの、思春期の数年にわたって続くことがあり、悪くすると痕が残る、というのがその説明です。
できる仕組みについて、同じ学会の解説はこう述べています。皮脂の分泌が多いことと、毛穴の出口が詰まることが重なると、毛穴の中に皮脂がたまります。この状態が「面皰(めんぽう)」で、ことわざの「思われ面皰」の面皰と同じ字です。詰まった毛穴の中は、皮脂が多く酸素が少ないため、肌にもともと住んでいるアクネ菌が増えやすい環境になります。菌が増えると炎症が起き、赤いぶつぶつや膿のたまったニキビになる、という流れです。
日本痤瘡研究会も、ニキビは毛穴の病気で、皮脂が多い状態で毛穴が詰まるところから始まると説明しています。思春期になると性ホルモンの分泌が盛んになり、その影響で皮脂の分泌が増えるとされています。恋をする年ごろにニキビが増えるという江戸のことわざの見立ては、仕組みの面から見てもあながち外れていないことになります。
よく言われる「チョコレートを食べるとできる」という話について、同研究会はカカオが入っていてもいなくても違いはなかったというアメリカの研究を紹介しています。また、自分でつぶすと周りの皮膚が傷つき、近くの毛穴まで詰まりやすくなるうえ、膿が皮膚の下で破れると痕が残りやすくなる、とも書かれています。占いの読みがどうであれ、肌の上の一粒は、こうした仕組みで生まれて消えていくものです。
一粒を、誰の名前で呼んだか
「思い思われ」の占いの面白さは、ニキビそのものより、それを見た瞬間に誰の顔が浮かんだかにあります。おでこの一粒に「思い」と名前をつけたとき、心の中で誰かの名前を呼んでいたなら、それがこの占いが教えてくれることのほとんどです。
江戸の人々は、若者の顔の吹き出物を見て恋を冷やかしました。昭和の教室では、手鏡をのぞいて友だちと笑い合いました。どちらも、一粒のニキビを重たい知らせとしてではなく、年ごろの話の種として扱っています。振られの場所に出たとしても、それは四つのうちの一つを引いただけで、数日たてば消えていくものです。
鏡の前でため息をついたなら、触らずにそっとしておくことと、今夜は少し早めに眠ること。そのうえで、浮かんだ名前のほうは、ニキビが消えたあとも覚えておいてかまいません。
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出典
- 「思い面瘡、思われ面皰」の意味 - 故事・ことわざ・慣用句辞典オンライン(閲覧日: 2026-09-27)
- 思い、思われ、振り、振られ・・・島田奈美から流行ったニキビ占い - ミドルエッジ(閲覧日: 2026-09-27)
- にきび Q1 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)(閲覧日: 2026-09-27)
- にきび Q3 - 皮膚科Q&A(公益社団法人日本皮膚科学会)(閲覧日: 2026-09-27)
- ニキビQ&A - 日本痤瘡研究会(閲覧日: 2026-09-27)
この記事はスピリチュアルな解釈を紹介するもので、医療・金銭・法律の助言ではありません。